概要
- 検知管式気体測定器
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検知管と気体採取器を用い、対象気体の濃度を測定するシステム。
機能
- 気体採取器
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検知管に、一定量の試料気体を通気させる機能をもった器具。
- 真空方式
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完全に押し込んだ状態のピストンを一気に引くことにより、気体採取器のシリンダ内に真空状態をつくり、接続してある検知管を通して試料気体を吸引する方式。
- 送入方式
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はじめに送入方式の気体採取器でシリンダ内に試料気体を採取し、その試料気体を押し出して、検知管に通気させる方式。
- 検知管
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気体の濃度測定を目的とし、一定内径のガラス管などに、対象気体に鋭敏な変色反応を示す検知剤を緊密に充てんし、両端を熔封。表面に濃度目盛を印刷したもの。
- 担体
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各種試薬を保持させるための細粒。ガステックでは、シリカゲル、アルミナ、セライト、珪砂等を使用。
- 充てん剤
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検知管および反応管に充てんされている薬剤の総称。シリカゲル、アルミナ、珪砂などの担体に各種試薬を含ませたもので、その種類には検知剤、反応剤、酸化剤、除去剤、除湿剤などの種類がある。
- 検知剤
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対象気体と反応し変色層をつくる薬剤。
- 反応剤
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対象気体を測定可能な気体に変化させる薬剤。
- 酸化剤
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対象気体を酸化して測定可能な気体に変化させる薬剤。
- 除去剤
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試料気体中の、干渉ガスを除去するための薬剤。
- 除湿剤
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試料気体中の、水分を除去する薬剤。
構造
- シリンダ形
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気体採取器の構造上の種類の一つで、シリンダを有しているもの。
- リップシール
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シリンダとピストンの密着面に用いるシール材の一種。気密性の高い唇形をしていることから、リップシール(Yリング)と呼ばれている。
- インレットゴム(測定管取り付け口)
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気体採取器の吸引口に取り付けたゴム製の管で、検知管の接続に用いる。
- パッキング材
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検知管内の充てん剤が緩まないよう、両端に詰められている栓。ガステックではポリエチレン、グラスウールなどを使用。
性能および特性
- 目盛範囲
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検知管に印刷された目盛の範囲で、基準吸引回数で試料気体を採取した場合、指示値=濃度として、目盛を直接読み取ることができる濃度範囲。
- 測定範囲
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吸引回数を変えることにより可能となる、測定の最大範囲。目盛範囲と異なる場合が多い。
- 検知限度
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当該の検知管で検知できる最も低い濃度。検知剤の入口部分に、肉眼で見分けられる程度の変色が現れる。
- 吸引時間
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ハンドルを一気に引いてから、1回の吸引が終了するまでの目安の待ち時間。
- 測定時間
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1回目のハンドルを引いてから、指示値の読み取りまでに要する時間。
<測定時間=1回の吸引時間×吸引回数>
- 変色
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化学反応による、検知剤の色の変化。
- 有効期限
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表示の条件で保存した場合、検知管の精度を保証する期間。
- 校正用ガス
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検知管やセンサ式測定器の濃度目盛決定時、および目盛の校正などに用いる、一定濃度に調製されたガス。
- 内容積
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吸引可能な、気体採取器の容積
- 指示精度
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指示精度には次の2つの評価方法があります。
(1)指示値の示すばらつき程度の評価に用い、変動係数で表す場合。
(2)指示値の正確さとばらつきの程度を含めた総合的な評価に用い、JIS K 0804の性能などのように許容誤差を%で表す場合。
- 変色先端面の傾斜
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測定後、検知管の変色層の先端が斜めになること。
- 検知剤端面の傾斜
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検知剤の入口部分(ゼロ点)が斜めになっていること。
- 誤差
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検知管の指示値と、真の濃度との差。
- ばらつき
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指示値、またはその平均値の大きさが揃っていないこと、もしくは不揃いの程度。
- 吸引回数
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検知管に試料気体を通気させるために、気体採取器で吸引する回数。
- 基準吸引回数
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指示値=濃度として、目盛を直接読み取ることができる吸引回数。
指示または表示
- 測長形
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検知管のタイプの一つで、化学反応や物理吸着による変色層の長さで濃度表示をするもの。
- 直読式
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検知管のタイプの一つで、検知管に目盛が印刷され、濃度がそのまま読み取れるもの。日本で初めて、ガステックが開発しました。
- 変色層長
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検知管の検知剤が反応したときの変色層の長さ。
- 検量線
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検知管の目盛づけに用いる、対象気体の濃度と、検知剤の変色層長との関係を示す線図。
- ゼロ点
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検知管に印刷された濃度目盛のゼロの線で、検知剤もこの位置から充てんされている。
- 指示値
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変色層の先端面が示す目盛の値。
測定対象
- 物質
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空間の一部を占め、有限の質量をもったものを、一般的に「物質」といい、化学的な組成や温度、圧力などの諸条件に従って気体、液体、固体の3つの形態の間を移り変わる。
- 気体
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空気に代表されるように、一定の形・体積がなく、流動性をもち、容器全体に広がって液体のような表面を示さない物質。
- 液体
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水、アルコールなどのように、常温で一定の形をもたず、流動性があり、ほぼ一定の体積をもつ物質。
- 固体
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金属、石英などのように、一定の形・体積をもち、それが外力によって容易に変化しない物質。
- 試料気体
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気体環境測定においては、濃度測定のために採取する気体を指す。一般的には、ある特定の目的をもった化学的な試験、検査、化学分析に用いる気体を指す。
- 対象気体
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濃度測定の対象となる気体。
- 腐食性物質
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接触により、被接触物質を腐らせる(変化させる)性質をもった物質。
- 悪臭物質
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人が、不快と感じる臭いの原因となる物質。
- 有機溶剤
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主に炭素および水素からなる(酸素、ハロゲンなどの原子を有することもある)液体の有機化合物の総称で、他の物質を溶解するが、その溶解物質とは化学反応しない性質をもっている。
- 無機ガス
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気体状の無機化合物の総称で、一般に無機化合物とは、有機化合物と通称している化合物を除いた物質を指す。
- 特定化学物質
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労働安全衛生法施行令・別表3に掲げられている物質を指し第1類、第2類、第3類に分類されている。
- オイルミスト
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空間に、霧状に浮遊しているオイル。
測定条件
- 干渉ガス
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試料気体中に共存し、検知管の指示値に影響をおよぼす気体。
- 共存ガス
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対象気体以外で、試料気体中に共存している気体。
- 使用温度範囲
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気体測定器(検知管式ガス測定器)の使用が可能な温度範囲のことで、試料気体の温度ではなく、検知管および気体採取器の温度である。
- 温度補正
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温度の影響を受ける検知管の指示値に対して、真の濃度を求める為に行う補正のこと。
- 湿度補正
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湿度の影響を受ける検知管の指示値に対して、真の濃度を求める為に行う補正のこと。
- 気圧補正
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気圧の変化による指示値の補正で、気圧が著しく変化した場合、すべての検知管に適用される。
測定原理
- 反応速度
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化学反応が進行する場合の、各成分の量が変化する速度。
- 化学反応
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物質が環境の変化、または他の物質との相互作用によって、別の物質に変化する現象。
- 中和
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酸と塩基が反応すること。
- 酸化
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反応に関わる物質分子中の水素原子数が減少するか、または酸素原子数が増加すること。
- 還元
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反応に関わる物質分子中の水素原子数が増加するか、逆に酸素原子数が減少すること。
- 生成物質
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物質がそれ自身、または他の物質との相互作用によって変化し、発生した物質。
- 熱分解
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化合物が熱によって分解すること。
測定法の種類
- 短時間測定
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検知管を使用した測定で、分単位で測定が終了するもの。
- 長時間測定
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検知管を使用した測定で、時間単位で測定が終了するもの。
- 換算係数/換算スケール/グラフ
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検知管によっては、対象気体以外にいくつかの気体を測定できるものがる。換算係数とは、指示値に特定の値を掛けて換算する方法で、この値をいう。換算スケール/グラフとは、指示値をスケール/グラフで換算する方法で、このスケール/グラフをいう。換算で他のガスを測定する場合、固定の換算係数や換算スケール/グラフを用いる関係上、一般の検知管と同等な精度が得られない場合があるため、換算により得られた測定値は、参考値としてお取り扱いください。なお、一般の検知管と同等な精度を希望される場合は、お手数ですが弊社までお問い合わせください。
- 吸引式
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試料気体および液体の採取方法の一つで、検知管を通して強制的に吸引する方式。
- 拡散式
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試料気体の採取方法の一つで、気体の自然拡散による方式。
生産管理
- QC No.(品質管理番号)
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検知管一本一本に印刷されたガステックの品質管理番号。品種毎に等しい条件、もしくは等しいと思われる条件下(同一ロット)で生産された製品に付けられる。
- 充てん密度
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検知管内の充てん剤や栓などの充てんの程度。
- 調剤
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検知剤をはじめとした充てん剤の調製・製造のことで、多種の試薬を担体に含ませる工程。
- 最終検査
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完成した検知管が、製品としての要求事項を満たしているかどうかを判定するために行う最終段階の検査。
- 定期検査
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製品となった検知管について、有効期間中、定期的に行う性能検査。
保守点検
- 気密試験
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気体採取器の気密性の程度を調べる試験。
- 保管方法
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製品の精度を維持するために必要な保管の方法で、この条件下で保管した場合、有効期限内の精度を保証する。
検定基準
- NIOSH
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米国の国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health)の略で、世界で初めて検知管の検定制度を確立した機関。
- 品質管理体制
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全社的に品質管理を行うための組織、およびシステム。
- 性能要件
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特定の製品に対し、いくつかの必要とされる性能の項目。
- 日本産業衛生学会の許容濃度
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健康障害の予防を目的に、日本産業衛生学会が、その存在を許容できると認めた有害物質の濃度。
- 管理濃度
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作業環境状態の評価を目的としたもので、労働安全衛生法において、管理区分を決定するための指標となる有害物質濃度。
- TLV-TWA
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1日8時間、週40時間の、正規の労働時間中の時間荷重平均濃度のことで、大多数の労働者が、この条件で繰り返し曝露されても健康障害を起こさない濃度。
- TLV-STEL
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15分以下の短時間、断続的にでも曝露されてはならない濃度の限界。
国際規格
- JIS K 0804
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検知管式ガス測定器を規定した日本工業規格。
- JIS M 7650
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測長式一酸化炭素検知管を規定した日本工業規格。
- ISO 17621:2015
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Workplace atmospheres — Short term detector tube measurement systems — Requirements and test methods
検知管に関する国際規格。
- IUPAC
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国際純粋応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)の略。
- ANSI
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アメリカ規格協会(American National Standards Institute)の略。
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検知管式測定器について
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気体測定の一般知識
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参考資料