測定器について
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Q1.
酸素濃度計や各種ガス検知警報器を使用していますが、メーカーによる定期点検は必要なので しょうか。
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A1.
ガス測定器においては、必ずしもメーカーによる定期検査は義務付けされていません。点検作業はメーカーのみならず、ご使用者側でも行うことが可能です。重要なのは、機器の信頼性を維持させるべく日常点検や定期点検などの保守点検を確実に実施することです。この保守点検により正確なガス測定が行なえることはもちろん、機器の性能・機能を長期にわたり良好な状態に保つことができます。
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Q2.
具体的な日常点検・定期点検の方法を教えてください。
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A2.
(1)日常点検―使用前の点検で、機器の動作が正常であるかを調べます。
A)外観点検―目視で本体およびセンサケーブルの断線・接触不良、吸引式の場合は吸引ホースに亀裂・損傷がないかを確認します。
B)電源電圧―乾電池あるいは充電式電池の残量を確認します。
C)センサ―酸素濃度計ではセンサの出力が指示値23%以上あることを確認、その他のガス種についてはゼロ点調整が行なえることを確認します。
D)警報動作―警報機能を有している機器では、必要に応じて各ガスの警報設定値で警報を発することを確認します。
(2)定期点検―メーカー点検を含めた定期的に行う点検で、期間を定めて機器の性能をより詳しく調べ、次の定期点検までの故障発生の予防を目的として実施します。 点検内容は前述の日常点検項目A)~D)に加え、センサの感度校正が重要となります。
E)感度校正―酸素濃度計以外の検知警報器では、校正用ガス(スパンガス)を使ってそのガス濃度を測定器の指示に合わせ、センサの感度を調整します。これは、センサの感度が時間の経過や温度・湿度などの環境条件によって相対的に変化するためであり、校正ができない時は新しいセンサに交換し、測定の正確さを確保します。
ここでは代表的な点検項目を挙げました。実際の保守点検内容につきましては、各々の取扱説明書に記載された項目に基づいて点検を行ってください。
ガス校正キットCK-2を用いたガス検知警報器の校正
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Q3.
計測器に市販の単3形・単4形の充電式電池を使用することができますか?
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A3.
当社製品の防爆電気機器は、使用する電池の種類を指定しておりますので、アルカリ・マンガン乾電池以外は使用することができません。防爆品以外の機器の場合は使用することができますが、その際には注意が必要となります。現在市販されている充電式のニッケル水素・ニッカド電池は、当社が使用を指定しているアルカリ・マンガン電池とは放電電圧特性が異なり、平らな特性を示し、末期では急激な電圧低下が発生します。そのため、機器に電池残量が正しく表示されず、場合によってはご使用途中で電池がなくなる場合もございます。
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Q4.
長期間(1ヶ月以上)ガス警報器・測定器を使いません。保管及び再び使い始める際の注意点はありますか?
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A4.
ガスセンサは、アルコールや有機溶剤蒸気などに曝されると故障の原因となります。清浄な空気中に保管してください。また過放電により乾電池の液漏れが発生する場合もありますので乾電池を取り外して保管してください。再び使用し始める時には、電池を本体にセット後、センサのゼロ点が安定するまで放置しその後、点検・調整を行ってください。
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Q5.
ガス警報器・測定器の表示部が汚れているので、洗剤・アルコールなどでの拭き取りや水洗いをしてもいいですか?
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A5.
ガスセンサ及び本体が故障する可能性があるので、絶対に洗剤・アルコールなどでの拭き取りや水洗いは行わないでください。汚れがひどい場合は、水に濡らした布などを固く絞り汚れを拭き取る程度の清掃を行ってください。
また、最近ではインフルエンザ対策として手指の消毒にアルコールを含む消毒剤を使用することがありますが、アルコールの残った手でガスセンサに触れた場合にも性能が劣化する恐れがあり、故障の原因となります。アルコール消毒した後に測定器を使用する場合は、ガスセンサに触れないように注意してください。
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Q6.
携帯形ガス検知警報器の耐用年数はどれくらいでしょうか?
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A6.
ガスセンサやフィルタ、吸引ポンプ、電池などの寿命のある部品を都度交換し且つ定期的な点検を行っていても、検知警報器が使用される環境は一般的な電気機器に比べ特殊かつ過酷であり、持ち運ぶことによる環境変化の影響も大きいため、携帯形ガス検知警報器の妥当な耐用年数は5年程度とお考えください。産業用ガス検知警報器工業会発行の保守点検規格においても携帯形・装着形ガス検知警報器の妥当な耐用年数は5年とされております。
参考:産業用ガス検知警報器 保守点検規格 7.2項
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Q7.
ガス検知警報器はどのくらいの範囲のガスを検知しているのですか?
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A7.
熱線式、電気化学式、光学式など様々な検知原理のセンサによりガスを検知するものがありますが、どのような検知原理のものでも拡散式の場合はガス検知部、吸引式の場合には吸引口の近くに存在するガスだけを検知しています。このような特性のものであるため測定環境の広さ、深さや測定対象のガスの比重など考慮し複数個所の測定を行うことが必要になります。例えば、作業環境測定基準 第十二条(酸素及び硫化水素の濃度の測定)では酸素欠乏危険場所の濃度分布状況を知るためには5点以上測定することが規定されています。
参考:産業用ガス検知警報器 保守点検規格 5.5.2項a)
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Q8.
ガス検知警報器を調整(校正)するのに試験・校正用ガス濃度の推奨値はありますか?
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A8.
調整は2点校正(0調整とスパン調整)になりますので指示範囲に対して低い濃度や指示範囲の上限に近い濃度で校正した場合には警報点付近の誤差が大きくなります。通常は警報設定濃度の1.6倍(毒性ガスの場合は2倍の場合もある)濃度のガスや警報設定値付近、又は指示範囲の最大濃度の1/2付近のガスで行ってください。
参考:産業用ガス検知警報器 保守点検規格 附属書A A.3.2項
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Q9.
酸素・毒性ガス検知警報器GOT-110B-2を使っております。酸素センサと硫化水素センサの交換時期の目安を教えていただけないでしょうか。
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A9.
1年毎のセンサの交換を推奨しております。警報器のセンサは、使用の有無に係わらずに経時により劣化が進行し、出力が低下します。GOT-110B-2では、酸素
センサ、および硫化水素センサどちらも1年間のメーカー保証となっており、正しく取り扱えばこの期間、出力下限を下回ることなく使用することができます。1年を超えて使用すると保証範囲外となり、センサの交換が必要となります。
なお、高温、または極端な低湿・高湿環境などの過酷な環境下で使用や保管を続けた場合、センサの劣化が早まり、場合によって1年未満でセンサの交換が必要となることがあります。高温下では、酸素センサにおいて電極反応が過大に進行して電極での生成物量が増大し、硫化水素センサでは電極の劣化が進行します。また、低湿環境下では、酸素・硫化水素センサ共に電解液が減少しセンサの劣化が進行します。
センサが劣化すると、日常点検で実施するゼロ調整で指示が安定しなくなり、さらに月1回の定期点検で行うスパン校正の際、指示が校正用ガス(スパンガス)の濃度まで上がらなくなります。これらの点検を確実に行うことでセンサの寿命を監視し、正確な測定が維持できるように留意します。
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Q10.
一酸化炭素検知警報器CM-9Aの保守点検で、指示値の調整(スパン校正)を行おうと取扱説明書を読みました。説明書には、「校正」スイッチを押してから校正用ガスをセンサにあてると書かれていますが、先にガスをセンサにあてて「校正」スイッチを押しても、指示値の調整はできますか。
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A10.
指示値の調整を行う時は、必ず「校正」スイッチを押し続け、校正の待機状態となってから、ガスをセンサにあててください。先にガスをセンサにあてると指示値の調整を正しく行うことができません。
校正の待機状態になると、センサ出力のモニタリングが開始されます。モニタリング中は、あらかじめ決められた時間内で、一酸化炭素ガスがない時(0ppm)から校正用ガスがあてられた時(標準仕様は80ppm)までのセンサ出力の安定性を確認しています。出力が安定していれば、指示値は自動で校正用ガスの濃度に調整され、不安定な場合は、表示部にエラーメッセージが表示されますので、その際は新しいセンサに交換します。
先に校正用ガスをセンサにあてると、ガス濃度の変動がない状態で、センサ出力のモニタリングが行われます。この場合、経時劣化したセンサでも出力が安定していると判別されることがあり、エラーメッセージが表示されません。そのまま使用すると誤った測定値となり、正確な一酸化炭素濃度の監視を行うことができません。このため、先に「校正」スイッチを押してから、ガスをセンサにあてて校正を行います。
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Q11.
一酸化炭素測定器のガス校正(スパン校正)の頻度を教えてください。
定期メンテナンスの頻度についても教えてください。 -
A11.
スパン校正は測定器の精度維持のため1か月に1度、定期メンテナンスは6か月に1回以上の実施を推奨しています。
スパン校正とはセンサに校正用ガスをあてながら校正用ガス濃度が正しく表示されるように調整することをいいます。
ガステック製品については当社製の校正キットを使用することで、お客様ご自身で校正が可能です。
定期点検は、メーカー並びに関係メンテナンス会社や委託された検査会社、または保守管理の力量のあるご使用者が実施いたします。
<製品のメンテナンスに関するお問い合わせ先>
株式会社ジーセルビス
〒252-1107 神奈川県綾瀬市深谷中8-8-6
TEL:0467-79-3919/FAX:0467-70-6609
防爆構造について
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Q12.
防爆測定機器はどのような場所で必要なのでしょうか?
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A12.
労働安全衛生法および労働安全衛生規則により、爆発、火災が発生する濃度に達するおそれのある箇所において使用する電気機器は防爆構造電気機器でなければ使用できないとされています。
石油プラント、化学工場、可燃性ガスやガソリンなどの取扱場所、塗料や溶剤洗浄を行う場所、これらの物を保管する場所など、爆発や火災が発生するおそれのある工場や事業所で必要になります。
国内のこのような場所では、海外で防爆認定を受けている製品であっても厚生労働省指定の型式検定代行機関である(社)産業安全技術協会の検定に合格し、認定された測定器でなければ使用することは出来ません。存在するガスの種類、爆発性雰囲気の存在する時間、頻度に応じて必要とする防爆構造が異なってきます。
当社の携帯形酸素濃度指示警報計(型式:GOA-6H-S)の場合、防爆性能はi2G3となり本質安全防爆構造、爆発等級2、発火度G3となります。GOA-6H-Sは石油精製工場や石油化学工場等様々な場所で幅広くご使用いただいております。
お客様の用途に応じた測定器をご使用ください。
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Q13.
防爆電気機器であれば爆発性ガスが存在するどのような場所でも使用することができるのでしょうか?
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A13.
防爆電気機器は危険場所での使用に適するように設計されていますが、対象となる爆発性ガスの種類や使用条件を特定することで防爆性能を保証しております。対象ガスおよび使用環境に適した防爆性能を備えた機器をご使用ください。
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Q14.
アルカリ・マンガン一次電池の使用が指定されている防爆電気機器に充電式ニッケル水素電池を使用しても問題ないでしょうか?
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A14.
防爆電気機器は電池を含めて防爆性能を設計、試験、検定しているものです。機器本体及び取扱説明書に記載されている以外の電池電源を使用した場合には着火源となる可能性があり、防爆性は保証され ません。
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Q15.
電源を切っていれば防爆電気機器が使用される場所に携帯電話や携帯形の非防爆電気機器を持ち込んでも問題ありませんか?
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A15.
機器内部には着火エネルギー源となる電池が内蔵されています。防爆の技術的な対策が施されていないと電源を切っていても着火源となる可能性があるため持ち込むことはできません。
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Q16.
防爆機器が破損しました。ユーザーが修理して使用することができますか?
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A16.
防爆機器は機器の構造、材料、部品の全てを含めて防爆性能を確立しているものです。メーカ指定の消耗品であるフィルタやセンサの交換、電池の取り替え以外での修理は防爆性能が損なわれる場合がありますので修理は必ずメーカへ依頼してください。
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Q17.
外国で検定(認定)された防爆電気機器であればそのまま国内で使用しても問題ありませんか?
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A17.
日本国内で使用する防爆電気機器の場合には国内法令により日本の検定に合格したものでないと使用することができません。
ガスセンサについて
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Q18.
ガスセンサにはどのようなものがありますか?
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A18.
代表的なものとして、化学反応を利用した定電位電解式・ガルバニ電池式・ジルコニア式、化学反応と物理現象を組み合わせた接触燃焼式、物理現象を利用した半導体式・熱線形半導体式・熱伝導度式・赤外線吸収式・紫外線吸収式等のセンサがあります。
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Q19.
それぞれのセンサは、どのような目的・用途に使われていますか?
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A19.
定電位電解式センサは、対象ガスが豊富で生活環境や作業環境における一酸化炭素や窒素酸化物の測定器から半導体製造工場での特殊材料ガスの測定器や警報器まで幅広く用いられています。
ガルバニ電池式・ジルコニア式センサは、主に酸素センサとして、酸素欠乏危険作業場所における酸素欠乏事故防止を目的とした測定器、検知警報器に用いられています。
接触燃焼式センサは、水素・一酸化炭素・炭化水素・有機溶剤等の可燃性ガスセンサとして、これらのガスや溶剤を取り扱う現場で発火・爆発事故防止を目的とした検知警報器に用いられています。
半導体式・熱線形半導体式センサは、可燃性ガスおよび毒性ガスセンサとして、これらを取り扱う現場での発火・爆発事故や中毒事故防止のための測定器、検知警報器に用いられています。
熱伝導度式センサは、二酸化炭素・水素・メタンなどが比較的高濃度にある場所で、二酸化炭素では酸素欠乏事故防止、水素・メタンなどは発火・爆発事故防止を目的とした測定器、検知警報器に用いられています。
赤外線吸吸式センサは、一酸化炭素・二酸化炭素や炭化水素等、生活環境や作業環境の測定器から燃焼系の排ガス分析器まで幅広く用いられています。
紫外線吸収式は、二酸化硫黄・窒素酸化物等の大気汚染物質等の測定器・分析器に用いられています。
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Q20.
一酸化炭素ガスや硫化水素ガスを検知する定電位電解式センサではどのようなガスにより干渉を受けますか?
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A20.
干渉ガスとして、還元性ガス、有機溶剤、酸化性ガスなどがあります。
還元性ガスや有機溶剤によりプラスに干渉し、酸化性ガスでマイナスに干渉します。
測定器の濃度表示に与える影響の一例は下表の通りです。一酸化炭素 CO-604Eセンサの場合干渉ガス 干渉の程度
CO 1ppmに等価なガス濃度水素(H2) 15ppm 二酸化窒素(NO2) -1ppm 二酸化硫黄(SO2) 1ppm 一酸化窒素(NO) 6ppm 硫化水素(H2S) 0.2ppm メタノール 4ppm
硫化水素 H2S-604Eセンサの場合干渉ガス 干渉の程度
H2S 1ppmに等価なガス濃度水素(H2) 77ppm 二酸化窒素(NO2) -4ppm 二酸化硫黄(SO2) 5ppm 一酸化窒素(NO) 23ppm 一酸化炭素(CO) 4ppm メタノール 8ppm
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Q21.
測定器にセンサエラーのメッセージが表示されました。どうしたらよいでしょうか?
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A21.
センサが正しくセットされていない、センサ交換・電池交換後でセンサが安定していない、センサの異常・寿命などが考えられます。取扱説明書に従って、処置を行ってください。
※測定器によっては大きな警報音が鳴ります。
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Q22.
ガス検知警報器のセンサ交換時期の目安を教えてください。
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A22.
センサの種類により交換時期は異なり、通常は1~2年で交換を推奨しております。詳細は、各測定器の取扱説明書をご参照ください。
ガス検知警報器のセンサは、使用の有無に係わらず、時間の経過や使用環境により感度が劣化し出力が低下します。
より正確な交換時期を知るには、日常点検や定期点検にて検知及び警報に係る検査を行い正常に作動することを確認し、センサ出力が低下していれば交換します。